「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

宗像大社秋季大祭 「翁」の舞

2005年10月03日 | みやびの世界
日本書紀にその名を記されている道の神として、古代からの篤い信仰がありました。
 遣唐使の人々も航海の安全を祈念して、この社に詣でて遠く海を渡っていきました。
一年の祭事のうち、最大がこの秋の大祭です。Ⅰ日の「みあれ祭」に始まり、今晩の高宮の祭まで3日間、参道には300を越す露店が並びます。かっては近郊一の植木市でも賑った「放生会」ですが、平日でもあるせいか、人出も今ひとつでした。
 「みあれ祭」は沖津宮、中津宮の女神をこの陸地の辺津宮にお迎えするお供に、近郷の400隻を越す漁船が、大漁旗や幟で装飾してお供につき、沖ノ島、大島から神湊(こうのみなと)まで壮大な海上パレードを繰り広げます。2日は流鏑馬(やぶさめ)と、浦安の舞が奉納され、最終日の今日は、喜多流の方々による「翁」の奉納でした。
 鐘崎の海に沈鐘を探して得られず、替わりに浮き上がったのがこの面という、伝承を持つ面をつけての翁舞です。囃し方も見所に背を向け、神前に向かって着座、笛と小鼓だけの組み合わせです。
舞台に持ち出された面箱を開いて、神前で面をつけて舞が始まります。いつもとは勝手が違い、あくまでも神への奉納ですので、後ろ向きの演能拝見となります。
終わって、社殿の奥山の高宮に上ってみました。今晩の祭事の準備のための篝火の仕度や、いつもは閉じられている神籬(ひもろぎ)の中に神職の方々が足袋裸足で入って奉仕されていました。
ここからは玄界灘が望まれ、海上の安全を守る神としての意味を理解できます。
今宵とりおこなわれる神祭りに思いを残しながら薄の揺れる道を帰宅しました。

 


写真説明   直面のまま       面をつけての舞
       終演          高宮の案内
       ひもろぎへの石段(下)   神籬